さわらび大学レポート「認知症について」

さわらび大学レポート「認知症について」


開催日時:平成24年8月9日(木)午後3時~午後4時
会場:小規模特別養護老人ホーム「カサブランカ」1階カトレアホール
講師:さわらび大学講師医療法人・社会福祉法人さわらび会理事長
   元老年医学会評議員 山本孝之医学博士
講演名:認知症について

挨拶:山本ゆかりカサブランカ施設長
 さわらび大学は、40年前から地域の皆様を対象に、保健・福祉・医療および歴史・文化・科学並びに時事講話など
幅広い分野の知識や教養の提供と地域交流を目的ではじめました。
 今後も5月にオープンしたカサブランカを会場に開催いたしますので、お友達誘って皆様に来て頂きたいと思います。

講演:「認知症について」山本孝之医学博士 
■脳の特徴
 認知症は脳の病気。脳はブドウ糖を原料として酸素を使って活動をしている。しかしブドウ糖も酸素も蓄えられないため、
血管から脳にブドウ糖、酸素を送り続けなければならない。適度な心身活動が大事。楽しくて幸せなときには血液がよく流れる。
 脳はストレスに弱く、活性酸素がダメージを与えます。抗酸化物質(ビタミンE・C・ベーターカロチン・ポリフェノール)を
なるべく摂取して下さい。
 脳は場所によって担当する働きが違う。この三つが脳の特徴。

■代表的認知症
1.アルツハイマー病(ほとんどの方が該当)
<発生要因>加齢、高血圧、糖尿病、脂質異常症、頭部外傷、遺伝
<特徴>いつの間にか発症し、絶えず進行し(側頭葉から始まる)一定の順番で、症状が発現する。
 最近のことを、すぐ忘れる。場所が分からず迷子になる。時間や季節が分からない。衣類を着る順番が分からない。
じっとしていられない。徘徊、トイレの場所がわからず尿の失敗をする。目の前にいる人が誰かが分からない。このような順番で進行する。
2.血管性認知症(10人中3人程度)
<発生要因>脳血管障害で、知能を担当する所がおかされると発症。高血圧、糖尿病、脂質異常症、心房細動、喫煙など。
環境の変化(引っ越し等)も大きな要因。(前頭葉から始まる)
3.レビー小体型認知症(10人中1人程度)
 進行性の認知機能の低下で、変動性がある。見えないものがみえる幻視や、パーキンソンニズムがある。

■認知症の対応(これが大切)
A リハビリ
 日常生活動作の自立促進、特に排泄の自立を。

B 回想法 
 目と目を合わせ、スキンシップをしながら、短く分かりやすい言葉で、本人が自慢したいこと、一番活躍した時代のことをお尋ねし、
いつもほめる(1日に何回も)

C 音楽療法
 音楽の好きな人に、その人の好きな音楽を楽しんでいただく。楽しめる曲は、認知症の病型とその人の思い出によって違ってくる。

D 介護
1.認知症の三原則~いつも幸せに~
イ)いつも暖かい愛情と優しいいたわりを持って
ロ)決して、しからず、制止せず
 (徘徊に出ようとするのを「行っちゃダメ」と怒るのではなく「お饅頭とお茶が用意できました。こちらへどうぞ」
など上手く誘導するなどの工夫を)
ハ)今できることで、みんなに役立つ働きをしていただく
 (ありがとうねと感謝の言葉を)
2.適度な心身活動でいつも楽しく
 散歩、書道、お絵かき、風船バレー、園芸など1回20~30分程度
(時間が長いと酸化ストレスが増加)
3.いつも安心
 ひとりだけにしておかない。環境はなるべく変えない(認知症悪化に繋がる)。
4.その他
 いつも全身状態をよく見て、少しの変化も見逃さない。
 幼児扱いしない(敬意を持って、ちゃんづけをしない)。
 徘徊や日光浴を長い時間せず、節酒、禁煙。服薬管理をしっかりと。
 原則として、自動車の運転はさせない。

E ご家族への対応
1.絶対に、ひとりではお世話をしないように
 ひとりでの介護は、患者虐待か、介護者の早死をまねく。

2.福祉サービスを積極的に活用
 地域包括センターを積極的に活用し、福祉サービス利用のための要介護認定を受ける
 サービス利用(認知症対応型通所介護・認知症対応型共同生活介護・ユニットケア型特別養護老人ホーム)

3.無断外出行方不明発見ネットワークの活用
 お名前や連絡先を、ご本人の分からないところに付ける等の工夫を。

4.「認知症の人と家族の会」への入会

<参加者からの質問>
 「認知症と物忘れの違いについて教えて下さい。」
 簡単言うと、例えば、お昼ご飯に何を食べたのかを思い出せないのが「物忘れ」。
お昼ご飯を食べたこと自体を思い出せないのが「認知症」です。