さわらび大学レポート「認知症について」

さわらび大学レポート「認知症について」

開催日時:平成25年6月20日(木)午後2時~午後3時

会場:特別養護老人ホーム「第二さわらび荘」1階ふれあいホール

さわらび大学講師:医療法人さわらび会・社会福祉法人さわらび会 理事長

元老年医学会評議員 山本孝之 医学博士

講演名:認知症について

 

あいさつ:さわらび会専務理事 山本 ゆかり

足もとのお悪い中、野依校区の方をはじめ、地域の皆様、ご利用者様、御家族様総勢131名の皆様にお越しいただきまして、ありがとうございます。

 

講演:「認知症について」山本孝之 医学博士

 

■脳の特徴

1.認知症は脳の病気

脳にとって一番大切なことは、頭への血のめぐりによってエネルギー源であるブドウ糖と酸素が十分に供給されることです。頭の血のめぐりの善し悪しが、頭の働きと認知症の発生と経過を左右する。適度な心身活動と楽しく幸せであると、頭の血のめぐりが良くなり、ゆううつ、悲しみと動脈硬化が血のめぐりを悪くする。動脈硬化は、高血圧とコレステロールや中性脂肪が多いことによって、促進される。

 

2.脳は酸化ストレスに一番弱い臓器

心身活動などで、周囲の細胞や組織を強力に酸化する危険な活性酸素が発生する。対して私たちの体は抗酸化酵素を作り、また食べ物に含まれる抗酸化物質ビタミンE、C、βカロチン、ポリフェノールを摂取することにより活性酸素を消している。脳は体の中で一番エネルギーを必要とするため活性酸素が一番多く発生するが、抗酸化酵素が少ないため、脳は酸化ストレスに最も弱い臓器である。

20分程度の適度な運動をすることと抗酸化物質をなるべく多く摂取するのがよい。

 

3.脳には前頭葉、後頭葉、側頭葉、頭頂葉の4つがあるが、場所によって担当する働きが違う。

 

■代表的認知症

1.     アルツハイマー病 (一番多い)

アルツハイマー病は、脳の病的老化現象なので、日本人の寿命が延びるとともに多くなった。

<発生要因> 加齢、高血圧、糖尿病、脂質異常症、頭部外傷、遺伝などで発生が多くなる。

<特徴>いつの間にか発症し、絶えず進行し一定の順番(側頭葉→頭頂葉→前頭葉→後頭葉)で、症状が発現する。

最近のことを、すぐ忘れる。場所が分からず迷子になる。時間や季節が分からない。衣類を着る順番が分からない。じっとしていられない。徘徊、トイレの場所がわからず尿の失敗をする。目の前にいる人が誰かが分からない。このような順番で進行。


2.     血管性認知症

<発生要因>脳血管障害で、知能を担当する所がおかされると発症。高血圧、糖尿病、脂質異常症、心房細動、喫煙などで促進される。

環境の変化(引っ越し等)も大きな要因。環境の変化で頭を使い、頭の酸素の必要量が増え、相対的に脳細胞の酸素が不足するために発症する。

<特徴>まだらぼけ トイレの失敗はあっても、難しい漢字が読めるなど。

うれしいのに笑顔で涙が流れるなど、感情のコントロールができなくなる。

血流が良くなったり悪くなったりするため日によって時によって症状が変化する。

階段状憎悪 悲しいことがあればがくっと悪くなる。

 

3.レビー小体型認知症

進行性の認知機能の低下で、変動性がある。幻視や、パーキンソンニズムがある。

 

■認知症への対応

 

A.リハビリ

日常生活動作の自立 特に排泄の訓練が重要

自分で尿意があるか、ないかで区別

㋑尿意がある人 行きたそうならトイレへお連れする。近くにポータブルトイレをおいておく。

便所とわかりやすく表示。排泄しやすい服装。

㋺尿意がわからない人 その人のリズムにあわせ定時誘導

なるべくオムツをせずに用を足していただく

 

B.回想法

その人が一番社会で活躍した時代の、楽しい思い出を思い出してもらう。功績をほめるような話しかけがよい。

 

C.音楽

好きな音楽を楽しんでいただくと進行を止められる。

アルツハイマー型はリズミカルな曲で手拍子、足拍子を一緒に行う。

血管性は美しいメロディーを度々聞いていただく。

唄って楽しまれるのは、民謡や童謡。

 

D. 介護

認知症の方が幸せだな、と思っていただける介護をしていただきたい。

1. 認知症介護の三原則

イ)いつも暖かい愛情と優しいいたわりを持って

ロ)決して、しからず、制止せず

ハ)今、できることをしていただく

今できることで、みんなに役立つ働きをしていただく。
周りの人に役立てる幸せを感じていただく。何ができるかお聞きし、やっていただけたらほめるのが大切。

2.適度な心身活動でいつも楽しく

何が一番楽しいか考え、それを行っていただく。

風船バレー 散歩 絵を描く 字を書く など楽しんでできることを一緒に楽しむように。

3.いつも安心

不安は、症状を進行させる。ほっておかない。環境を変えない。なるべく住みなれた我が家でお世話をするように。

4.その他

少しでも変化があれば医者にみていただく。子供扱いするような呼びかけで、ちゃんづけしない。

日光浴は短め 酸化ストレスにつながる。徘徊するようであれば甘いお菓子とお茶をさしあげて休んでいただく。

節酒、禁煙 服薬管理をしっかり。自動車の運転はさせない。

 

E.ご家族への対応

1.ひとりでお世話しない。 虐待か、介護者の早死ににつながる。

2.福祉サービスを積極的に利用を

地域包括支援センターでご相談していただき、御家族が過労にならなように症状にあった福祉サービスを利用していただく。また、さわらび会には24時間365日ご相談に対応する福祉コンビニもありますので、お困りなことがあれば、いつでもどなたでも是非ご連絡ください。

3.無断外出行方不明者発見ネットワーク利用

4.「認知症の人と家族の会」入会を

 

質問

・スクリーンの脳画像について説明して頂きたいです。

正常な人の脳と、アルツハイマーの人の脳です。アルツハイマーは、側頭葉の記憶を担当する部位の萎縮から始まります。血管性は、重要な部位への出血や梗塞で発生します。

 

・遺伝の傾向はありますか?

アルツハイマーの原因は不明。血管性の原因は動脈硬化、糖尿病など。血圧、コレステロールの値は遺伝するが、認知症は、直接は無関係。

 

・認知症のテストはありますか?

長谷川式などいろいろあります。例えば、こんな簡単なテストがあります。100から7を引く、さらに7を引く、というのを短時間に行っていくものがあります。さらに、CTとかMRIなどをとって正確に分析できます。

 

・身近に認知症ではないかという人がいるのですが?

福祉村病院は認知症専門の病院なので、受診に来て下さい。

 

・経済的な不安があるのですが?

病院にはケースワーカーがいて、患者様御家族の相談にのり、ふさわしい治療ができるようにしています。収入の少ない人には減免措置があり、食事代部屋代が安くなります。特別養護老人ホームと呼ばれる施設では、多床室とユニット型個室がありますが、多床室の方がお安いです。