8月7日(木)テーマ 介護施設における「看取り」について
8月7日(木)テーマ 介護施設における「看取り」について
職員研修(テーマ別研修)
研修名:介護施設における「看取り」について
講師:全国特定施設事業者協議会事務局員
グラード名古屋駅前・浄心・栄東 統括施設長 吉村仁志
日時:平成26年8月7日(木)14時~16時
会場:珠藻荘
内容
対人援助の基本
講師自身の自己紹介を行い、「自己開示」と「自己覚知」の手本を披露して下ったのちに、
施設職員として初めての利用者の方にお会いしたとき、何に心掛けて接するかを2人一組で実践を行いました。
参加者から“笑顔”“目線を合わせる”などに注意したと意見が出る。
良い人間関係を作るには、挨拶を意識してしっかり行う事が必要。
口角を上げた笑顔をしっかりと作ることが必要。
ターミナルケアをめぐる状況
①単身高齢者の増加
②認知症高齢者の増加
③最後の場所は病院から施設・住宅へ
④高齢者の収入状況の多様化(二極化)
ターミナルケアと倫理
人間の死は、近代医学の医師にとっては、医療の『敗北』
医療技術の高度化、延命技術の向上。医療の非人間化?
ヨーロッパでは口から食べられなくなったら医師ではなく神父・牧師の仕事。
日本老年医学会の見解
高齢者の終末期医療とケアについて
胃に管で栄養を送る胃瘻などの人工的な水分・栄養補給や人工呼吸器の装着は慎重に
検討し「治療の差し控えや中止も選択肢として考慮する」
ターミナルケアの二つの目的
東大医学部宮下氏(緩和ケア学講師)によると
② 苦痛を緩和すること
②限られた命の中で可能な限りその人のQOLを高める。もしくは維持すること。
人として尊重し、最大限の敬意を払ってその人らしい最後迎えられるようにサポートすること。本人や家族の決めたことをサポートする。
患者本人だけでなく家族への支援が大事。
☆生命の延長を第一の目的にしない。
「Dying Process」=亡くなるまでの過程を大切にするという考え方。
“看取り”と“見取り”
家庭で家族に看取られて死を迎える事と同様に、施設での見取りは、施設が家庭となり、職員皆が家族として、死を見取ること。
そう考えると、施設での“みとり”は、“看取り”より“見取り”がマッチするように思える。
“看取り”と文字にすると、看護師特有の物の様な感覚に陥る気がしてならない。
施設での“みとり”は職員全員で看取るのですから“見取り”で表現したい。
施設で看取りが出来ない理由
① 責任が取れない
看取る場合の絶対条件
1、 病状及び、治療方針をご家族、ご本人が、納得できている。
2、 ご家族、ご本人が施設での看取りを希望している。
特にご家族全員の同意が必要不可欠。
② 看護師・介護士等のマンパワーの不足(経験不足・知識・技術の不安)
施設での看取りの介護処置
①血圧、体温、脈、呼吸数、皮膚の色
②水分出納(排尿量)、排便状況
③意識レベル
④吸引(一定の講習を受けた介護職)
施設では、家庭で看取る場合の家族が行う事を代行すればいい。
後は、経験を積むことが必要。
看護師の行う医療補助業務
①点滴管理、中心静脈栄養
②経管栄養
③在宅酸素
④呼吸器管理
⑤疼痛管理
看取りは医療に付随する看護ではない。
看取りの看護は、“死”を見届ける介護。
「出来るだけ手を尽くす」=「出来る限り苦しめる」
特別養護老人ホーム同和園 中村仁一医師
①飢餓・・脳内にモルヒネ物質が分泌され、いい気持になる。
②脱水・・血液が濃く煮詰まることで意識レベルが下がりぼんやりとした状態
になる。
③酸欠・・脳内にモルヒネ物質、炭酸ガスは麻酔作用がある。
死の苦しみを防いでくれている。老衰の特徴。
“施設全体が大家族”全職員で看取る事でマンパワー解消
③ 緊急時の対応
看取りの介護は、緊急時を通過した時期。
既に緊急時の対応は完結した時期
死を受け止め、どのような死を選ぶか、共通理解の上での看取りの介護
緊急時と捕えて右往左往するのであれば看取りの介護は出来ない。
死の瞬間を御家族、ご本人と職員が共に、死を見届ける介護が看取りの介護。
④ 精神的負担
“死ぬんじゃないか”と思いながら介護するのが「怖い」
介護に携わる人は、「人生観」を持つことが重要。
人生の執着を共にし、担うのが介護職であると自覚してほしい。
死は嫌な物でも穢らわしいものでもない。特に高齢者の場合は死は自然なこと。
死の場面は・・・
血圧が低下する。脈が触れなくなる。尿が出なくなる。努力呼吸、下顎呼吸。
呼吸停止=「吐いて」終わり。「吸わない」心臓はしばらく動く。
叫んだり、暴れたりする事なく静かに逝かれる。
「生きることは」
どんな状態にある人でも、私達が必要とし、その方の人生を尊び、そして、愛する事で、誰でも、生きる事が出来る。→これを伝え続けることが、私たちの仕事。
「死ぬことは」
人間としての死は、その存在を「認めてもらえない」「無視される」「その存在に関心さえ持ってもらえない」「大切に思ってくれる人が誰もいない」→死んだ方がいい
施設での「看取り」は増加傾向?
①政策的な誘導(最期の場を病院から自宅・施設へ)
②ご入居者様の重度化
③病院に長く入院できない
④環境的に病院で最後を迎えたくない。
介護施設での看取りを進める上で
①医療との連携(医師との関係)
②介護職、看護職、医療職とのチームワーク(4WD)
③経営者層の理解(訴訟などのリスクへの対応)
④施設の方向性(理念)の共有とスタッフの同意
⑤スタッフのやりがいと成長
⑥感性(センス) 聞こえない声にどれだけ気付くかが大切
「グラード」でのターミナルケア
3原則
①痛みなく ②苦しみなく ③さびしくなく
ケアの在り方
①ご入居者の意思を第一に考える。→ご家族、第三者の意思を最優先にしない。
②①の考え方から「身体拘束・抑制」は行わない。→自ら縛ってくれと言うご入居者は存在しない
③「テマンド」ではなく「ニーズ」を掴む。→期待されるのはスタッフの「モチベーション(やる気)」と「センス(感性)」
④スタッフ(医療含む)との信頼に基づいた看取りケア→「死生観」の共有、究極のサービスは看取りで完結。
絵本「だいじょうぶだよ、ゾウさん」を講師が朗読
作品内容についてグループ討議・意見発表
お互いに年を重ねることで、自然に死に向かう為の役割を感じ取る事が出来る様に成長することが出来る。
成長、発達する中で寂しさや怖さを乗り越えることが出来る様になる。
死は新たな旅立ちである。
その他の講師より参考映画の紹介
「最高の人生の見つけ方」 「エンディングノート」
質疑応答
死亡診断には、夜間でも医師が来てくれますか
答え
訪問診療契約をしているので来てくださいます。