平成26年10月24日(金)職員研修「介護職の倫理と業務のあり方」

平成26年10月24日(金)職員研修「介護職の倫理と業務のあり方」

職員研修(職階別研修)

研修名「介護職の倫理と業務のあり方」~パーソン・センタード・ケアの視点から~

講師:同朋大学社会福祉学部 准教授 下山久之

日時:平成26年10月24日(金)14時~16時

会場:珠藻荘

 

内容

パーソン・センタード・ケアは、新しい考えではない、介護福祉の理念と同じ。

1980年代のイギリスの施設ケアは、業務中心で、いつもお年寄りは待たされていました、この業務中心の考え方から、生活者中心のケアを目指したのが、パーソン・センタード・ケアの考え方。

パーソン・センタード・ケアの理念は、イギリスのブラッドフォード大学認知症ケアグループのトム・キャットにより提唱された。

パーソン・センタード・ケア=その人中心としたケア

 

認知症

①    老化のもっとも恐れられている側面。

②    多くの人に誤解されている。

③    認知症は社会のすべてに人の問題である(長寿社会では、認知症高齢者は特殊な存在ではない)。

 

認知症を持つとどんな気持か

①    感情的反応は以前より強くなることがある。

②    過去の出来事や記憶を、現在と感じる事がある。

③    現在の出来事が、過去の記憶の引き金になる事がある。

 

認知症の人の心理的ニーズ(潜在的ニーズ)

①    くつろぎ。

②    自分が自分である事。

③    結びつき。

④    携えること。

⑤    共にあること。

 

「その人らしさ(アイデンティティ)」

①    自己の内的な一貫性の感覚。

=自分自身で思ったり感じたりする「自分らしさ」の感覚。

②    自分と他人がある本質的な部分を共有している感覚。

※この部分は、他者から見える「その人らしさ」という側面が強く影響する。

この二つがすり合わさって「その人らしさ」は形成される。

 

認知症の人の「その人らしさ」

 

認知症の人は記憶障害、失見当識ゆえに

①    自己の内的な一貫性の感覚。

=自分自身で思ったり感じたりする「自分らしさ」の感覚

が、崩れやすい。そこで、それを補う。

②    自分と他人がある本質的な部分を共有している感覚。

が、とても重要になってくる。

 

認知症ケアの目的

 

記憶障害により自分自身で何者なのかが分からなくなっても、「周囲の人がその人の持つ、その人らしさを尊重し、理念を持って関わること」により、認知症の人のアイデンティティは維持される。

認知症の進行とともに、記憶障害や認知機能の低下が進んでも、ますます「周囲の人が、その持つ、その人らしさを尊重し、尊敬の念を持って関わること」によって、その最後まで認知症の人が、社会的存在としてあり続けられる。

 

認知高齢者の状態

良い状態(well-being)

・自分の意見をはっきり述べる。

・身体的にくつろいでいる。

・自尊心を見せる。

・他の人を援助する。

・ユーモアがある。

・社会的関わりを持つ。

・感情の表現をする。

・愛着をしめす。

悪い状態(ill-being)

・相手にされない悲しさ、寂しさがある。

・身体的な不快さや痛みがある。緊張がある。

・無気力や引きこもり。

・興奮。

・退屈。

・不安、絶望。

・絶え間のない怒り。

 

その人らしさ(パーソンフッド)を傷つけられるとは

①    個人のニーズと権利が考慮されない。

②    とても強い否定的な感情が無視されるか、受け入れてもらえない。

③    ますます孤立させられる。

 

個人の価値を低める行為

・だます。              ・人扱いしない。

・能力を使わせない。         ・無視する

・子供扱いをする。          ・強制する。

・怖がらせる。            ・後回しにする。

・区別する。             ・非難する。

・差別する。             ・中断させる。

・急がせる。             ・あざける。

・わかろうとしない。         ・侮辱する。

・のけ者にする。

 

その人らしさ(パーソンフッド)を維持するには

①    社会の完全な一員としてその個人のニーズを尊重する。

②    認知能力が低下するにつれ、ますます補償と安心を与える。

③    その人が社会的に存在できるようにする。

 

その人らしさの維持のために行うこと=ポジティブイベント

①    対人認知

②    交渉

③    協働

④    楽しみ

⑤    祝い

⑥    リラグゼーション

⑦    バリデーションとホールディング

⑧    ファシリテーション

 

ポジティブイベントを行うためには、人生歴が重要である(生活歴はケアのヒントの宝庫)、情緒的安心の提供、共同的コミュニケーション、「問題と思える行動」はコミュニケーションしようとする試みと考える。介護者をケアし支援する、その結果認知症高齢者の良い状態が訪れる。

 

パーソン・センタード・ケアへの道

①    認知症を持つとは、どんな感じか考えてみる。

②    認知症を持つとは、どんな気持ちが強くなるか考えてみる。

③    混乱をまねいたり、不快にさせること、不安にさせることを考えてみる。

④    心地よく、安心できることを考えてみる。

質疑応答

 

質問

職員によって対応が違う患者さんがいて、できる事を「できない」と言われる、どのように対応すればよいか?

回答

利用者さんとしっかり関わる、「一緒にできるようになりたい」と関わっていきたい意思を伝える。(しろがね 山田)