平成26年9月16日(火)テーマ別研修「大規模災害時におけるリスクマネジメント」

平成26年9月16日(火)テーマ別研修「大規模災害時におけるリスクマネジメント」

日時: 平成26年9月16日(火) 14:00~16:00
場所: 珠藻荘2F 多目的ホール
テーマ:大規模災害時におけるリスクマネジメント
講師: 福祉リスクマネジメント研究所 所長
びわこ学院大学 教授
烏野 猛氏

 

福祉リスクマネジメント研究所 所長の烏野猛氏を講師に招き、さわらび会職員を対象とした「大規模災害時におけるリスクマネジメント」研修を行いました。

いま、最も危惧される南海トラフ巨大地震が発生した場合に、どれだけ現実的かつ実効性のある対応ができるのかというお話しをして頂きました。

 

まず、「大規模災害に対応するマニュアル作成の限界と課題」について教えて頂きました。これは、災害種別ごとの防災マニュアルを作成するのは不可能であり、各インフラのダメージ度を考えた、総合的な防災マニュアル作成の必要があるというお話しです。また、各インフラ(電気・水道・ガス・通信・交通機関)がダメージを受けた時、想定されるリスクと、事前の対応策を学びました。

その中で、ご家庭でも備えておくと便りになる物品のお話しがありましたので、4つほどご紹介いたします。

①視覚で迅速に災害情報を把握できるよう、カーナビ及び携帯電話で、テレビの受信ができるようにしておくこと。

②建物が倒壊した場合の備えとして、1m程度のバール、小さいノコギリ、防刃手袋、鉄製の靴ソールを用意しておくこと。これらの物品は、あらゆる障害物から身を守るために役立ちます。

③電源を確保するために、車のガソリンは常に半分以上入れておくこと。

④浸水に備え、食料・飲料水は建物の2階以上に備蓄すること。

さわらび会でも、食料など様々な物品を備蓄していますが、このお話しで気付かされた点も多く、役立つ物品は随時揃えていきたいと思いました。

 

次に、「受入事業所として期待された場合のリスクマネジメントとリスクヘッジ」についてのお話しがありました。これは、介護事業所が「受入を期待・要請されたとしたら…」どうするかがテーマとなります。

東日本大震災では、被災施設でカルテ等が流されてしまい「利用者の情報収集」が一番問題となりました。利用者を受入るには「住所・既往歴、服薬情報、食事形態、緊急連絡先」等が必須であり、これらの情報をUSB等に入力し、いつでも持ち出せるようにしておく必要があるとのことでした。

また、「いつまでこの状況が続くのか分からないこと」、「スタッフのモチベーションの確保とインセンティブの問題」等、数多くの問題があり、受入の難しさを痛感しました。

 

次は「自施設における対応と事前準備についてのお話しがありました。具体的には、「緊急地震速報」発生から「緊急避難」までの約3時間でするべき行動を、様々な事例を基に教えて頂きました。この行動を可能にするには、以下3点のポイントが大変重要になってきます。

①大津波警報が発令されてから、直ちに避難するまでに考えておかなければならない点。

②要介護者を移送するための車両等の整備。

③防災マニュアルの周知と、津波に対する定期的な訓練。

これらは読んで理解するのではなく、実際に行動ができ、行動できるための項目を頭に叩き込んでおく必要があるとのことでした。さわらび会も定期的に防災訓練を行っているのですが、これまで以上に実践的な訓練を行わなければならないと実感しました。

 

最後に、「通所系事業所における大規模災害BCP」についてのお話しがありました。BCP(Business continuity planning)とは、「事業継続計画」のことで、自施設が被災し、事業(介護)レベルが低下した場合、被災する前と同じ状態に復旧する為の行動を学びました。

避難する際における予見すべき危険性の程度から、下記5点のポイントを重点的に学んでいきました。

①災害情報をどう収集するのか…?

②高齢者を家族に引き渡す義務の履行については…?

③高齢者を引き渡さず、避難させる場合には…?

④高齢者の引き渡しを期待する家族への対応は…?

⑤高齢者を引き渡すことの確実性とその方法については…?

このような緊急時に上司が不在の場合もあるため、自分で判断を下せるようマニュアルを熟知しておく必要があるとのことでした。

 

今回の研修では、大規模災害の恐ろしさ、介護従事者としての責務、事前準備の必要性、マニュアルの重要性等、様々なことがわかり、参加者は皆聞きいっておりました。

参加できなかった職員にも、防災訓練などの形で学んだ情報を伝え、大規模災害に備えていきたいと思います。(ジュゲム平松)