管理者研修「高齢者施設のリスクマネジメント」

管理者研修「高齢者施設のリスクマネジメント」

 

日時:平成30年11月29日(木)14:00~16:30

場所:福祉村病院 大会議室

講師:株式会社 安全な介護 代表取締役 山田 滋氏

 

今回の研修は介護現場でのリスクマネジメントについて基礎知識から対応までを学びました。

 Ⅰ.介護のリスクマネジメントの基礎知識

(1)事故防止活動の方法を見直す

従来の事故の原因は主に人のミスである為、事故を防止するには「人がミスをしないように管理する」→これは失敗した。

新しい事故防止の手法として「人は誰でも必ずミスをする」を前提に活動するとし

①人にミスをさせる原因も含め事故原因を究明し除去する活動

→「職員のミス」を決めつけずミスの原因を把握し改善する

②人がミスをしても事故につながらない仕組みづくり

→人がミスをした時にミスを発見するチェックの仕組み

※事故防止活動は職員が個人で取り組んでも効果は上がらない。効果を上げるには「組織で取り組み事故防止の仕組みを作る」こと

(2)全ての事故は防げない

防ぐべき事故と防げない事故を区別し防ぐべき事故に防止対策を講じる→介護の事故防止活動の原点

(3)過失のある事故とは

危険の予測ができるのに、その回避措置を怠って事故を起こすと過失として賠償責任が問われる

(4)事故・ヒヤリハットの評価

施設に過失のない事故でも家族が納得するとは限らない。利用者の安全に対する家族の期待は高い

防げない事故は「防げない理由」を家族に説明して納得してもらう

Ⅱ.事故防止の基本活動

ヒヤリハット活動の前にやるべき事故防止の基本活動

①安全ルールの徹底 ②施設の管理に関する危険の改善、利用者個別の危険把握と対処 ③ヒヤリハット活動

(1)安全ルールの徹底

①誰でも分かるように文章にして徹底しなければならない。暗黙の了解は機能しない

②罰則のないルールは守らない人もいる。モラルの低い人間は罰則があるから守る

罰則とは・・懲戒解雇、賠償金請求、業務上過失致死として裁判に

(2)施設の管理や業務手順に関する危険を改善する

①用具・道具の安全点検 ②建物・設備の安全性の点検 ③介助動作の見直し ④業務手順の見直し

(3)利用者個別の危険把握と対処

①入所前面談での身体機能や行動状態の把握

②ヒヤリハット発生時の再アセスメント

 Ⅲ.効果のあがるヒヤリハット活動

(1)ヒヤリハットシートを事故防止に活かす活動はなにか。ヒヤリハットシートはたくさん出てくるが事故が減らない。なぜか。

→ただ書いて提出するだけでは事故は減らない

「ケース検討」が最も有効な取り組みである

(2)ケース検討での原因究明の方法

事故やヒヤリハットの原因を1つに決めつけず、憶測・推測で良いから考えられる原因を出来るだけたくさん洗い出す

(3)防止対策の検討方法

①未然防止策 ②直前防止策 ③損害軽減策

①と③がきちんとできるようになれば事故は減る

 Ⅳ.事故防止の具体策

転倒事故、誤嚥事故、溺水事故、行方不明事故、原因不明の骨折などの具体策を学ぶ

Ⅴ.事故発生時の対応

◯誤嚥事故への対処

①すぐに看護師を呼ぶ(その間タッピング)②吸引開始(同時に救急車を呼ぶ)

呼吸停止から15分後は救命率0%

◯誤薬事故

※投薬した薬剤が利用者の体にどのような影響を与えるかは、医学的診断である為、看護師が判断してはいけない

Ⅵ.家族に利用者の生活リスクを共有してもらう取り組み

施設内の生活リスクについて説明+施設の事故防止対策を説明+事故防止への家族の協力依頼

 

今回は高齢者施設を中心とした事故防止についての講義でした。高齢者施設に限らず、障がい者施設においても事故は発生する可能性があります。事故防止の基本活動やヒヤリハット活動をしっかりと行うこと。職員間でしっかりと話し合うことで未然に事故を防いでいくことも大切であると学びました。

明日香 安田