2020年度新規採用職員研修レポート(1日目)

2020年度新規採用職員研修レポート(1日目)

講義:さわらび会の歴史と概要
講師:医療法人・社会福祉法人さわらび会 理事長 山本孝之
 さわらび会の前身である山本病院開設当時は、日本人の寿命が延びている時期でした。高齢者も増加していましたが、高齢者専門の医者はいませんでした。高齢になると血圧が上がり、脳の血管が破れる方が多くいらっしゃいましたが、当時はまだ、血圧を下げる薬がありませんでした。そのため脳卒中で倒れる方が多く、さまざまな不自由を抱える方が増えていきました。そこで脳卒中専門の病院を作りリハビリを行いました。また幸せとは何かを考え、脳卒中になり、半身麻痺になっても幸せに暮らして欲しい、そう願いました。そして、山本病院は認知症のリハビリに取組み、患者が殺到しました。それは、その時代に何が必要か、医者として何が出来るのか、そのことを真剣に考えた結果であります。
 新規採用職員の皆さんにも、今生きている時代を良く見て、その時代に何が望まれているのか、自分には何ができるのか、よく考えてそれを実行して欲しいです。
(あかね荘 杉山)

講義:さわらび会の基本理念について
講師:さわらびグルーブ CEO / DEO 山本左近
 福祉村の中には同じ機能を持つ施設はありません。それぞれ違う機能を持った施設の集合体が福祉村です。そして、それぞれの施設が助け合って成り立っています。
このような福祉施設の集合体は世界的に見ても珍しいです。
・基本理念について
 さわらび会の基本理念は「みんなの力でみんなの幸せを」です。
 そして、さわらび会は、今年58年目を迎えます。この58年間、常に違うことをし続けてきました。だからこそ、福祉村という珍しい福祉施設の集合体ができました。それは、樹の枝葉が伸びていく姿に例えることができます。しかし、樹には、私たちからは見えない土の中に根が生えています。基本理念は、樹でいうと、この根っこの
部分です。根がないと樹が育たないように組織も基本理念がなくなると崩壊します。それほど、基本理念は大切なものです。
・幸せについて
 人それぞれ、感じ方は違いますが、さわらび会では、「自立して自由に生き、今できることで他の人の役に立つ働きができる時」、幸せと感じると考えます。この幸せをみんなの力で守るために「みんなの力で、みんなの幸せを」という基本理念があります。
・さわらび会の歴史について
 1962年山本病院は開設されました。山本病院が1960年代後半には、すでに認知症に対する取り組みを始めていたことは、非常に画期的なことでした。その当時は、認知症は痴呆と呼ばれ、その痴呆という言葉も認知されていない時代でした。その時代から認知症の治療やケアに取り組んできました。そして、1973年に「いつも暖かい愛情と笑顔で、決して叱らず停止せず、今できることをしていただく」という認知症三原則を提唱しました。また、老人天国の構想を山本病院の院内報に発表しました。同じ頃、退院患者様の孤独死が分かり、二度とこのようなことは起こさないと患者様の御霊前に誓い、さわらび荘を開設しました。経済成長のさなかであった1978年には、野依福祉村構想を発表し、福祉村病院を中心とした、障害者施設、お寺、公園、郵便局、クリーニングセンター、保育園からなる、院内報で発表した老人天国を実現しました。
・インド福祉村協会について
 32年前、基本理念のビジョンは海を越え、「認定NPO法人インド福祉村協会」としてインドへ渡りました。それから10年間かかり、22年前クシナガラにアーナンダーホスピタルという病院を建てることができました。このクシナガラという地域は、カースト制度にも入れないほどの貧困層が住んでいる地域です。その地域で、階級や人種を問わず医療を提供することを理念としています。
・これからについて
 日本において超高齢社会の今、さわらび会の次の使命は、高齢になっても幸せに暮らせることを考えることです。
また、向こう30年間人口が減少することは確実です。この事実について私たちは考えていかないといけません。そのために自ら調べ、課題を発見し解決へ向けて行動して行ってください。
(あかね荘 杉山)

講義:さわらび会職員としての心構え
講師:医療法人さわらび会 副理事長 社会福祉法人さわらび会 専務理事 山本ゆかり
 今年で医療法人58年、社会福祉法人44年です。一般企業は1年続かない所が大多数で、3年残るのも非常に大変です。皆さんもやりがいをもって仕事を続けてほしいです。認知症介護の3原則は大事だが、実践が難しい。思いやりをもって実践に取り組んでほしい。在宅では対応が難しいと聞いていたが、職員が上手に関わる事で改善できた事がたくさんあります。
 一番お願いしたいのは、常に笑顔でいて挨拶がきちんとできる事。患者様や利用者様が挨拶をされてうれしかったと聞く事も有る。マナー・エチケットはきっちりと押えて下さい。また、技術的な面(介護や障害サービス)もこの研修で学んで頂きたいと思います。
私が尊敬する女性が二人います。一番ヶ瀬康子先生(元日本女子大学名誉教授)と渡辺和子先生(元ノートルダム清心学園理事長)です。一番ケ瀬先生は社会福祉学科の講師でした。先生の言葉で一番心に残っているが医療・介護の基本「熱き心とクールな頭」。反対だとだめですね。常に温かい心と冷静な判断力を持つ事。また渡辺先生は「無い物ねだりではなく、あるものを活かすことを考える」という言葉を残してくれました。往々にして真逆の事をしてしまう事が多い中、大変感銘を受けました。
 これからも、体に気を付けて一緒にさわらび会で働いていきましょう。
(あかね荘 白井)

講義:さわらび会の研修について
講師:さわらび会職員研修委員会 委員長 長坂敏幸
 現在コロナウィルスが日本中で流行っています。予防の基本は手洗いです。次亜塩素酸水(さわらび会ではウルトラ水と呼んでいる)を使って予防に取り組んでいます。
さわらび会の研修体系は「さわらび大学」「職員研修」「さわらび会研究発表会」の3本柱で構成されています。これらの柱を主に年間計画が作成されます。この新規採用職員研修は「職員研修」の一つとして位置づけられており、日程表に沿って全19日の予定で計画されており、講義・見学・筆記試験・実技などで構成されています。コロナウィルス流行の関係もあり、施設見学であったり、一部講義に関しては通年とは違い、感染症に配慮した構成となっていますが、福祉村の外にある施設なども見ていただく予定です。また、専門職以外の方も介護技術研修を受けていただきと考えています。
研修内容、特に学術的内容は記憶に留まりにくいと思います。聞いてるだけでは仕方ないことではありますが、どこかで役に立つはずです。ここがブレイクスルーポイントであり、誰でもこれが大事と思えた時に身に付くと思います。長期間の研修になりますが、頑張ってください。
(あかね荘 白井)

講義:認知症について 
講師:福祉村病院 医師 伊苅弘之氏

 伊刈先生の講義では、認知症とは何か?という、基本的なお話を中心に展開されました。
 図解や写真を用いて、認知所を知らない方でも分かりやすく学ぶことができる講義構成となっておりました。
 認知症とは、ひとつの状態のことを指します。記憶や判断力などの認知機能の低下により、日常生活に支障が出ることを指しますが、情緒感情面は正常で心は生きています。これは、大きな感情の起伏(嬉しいこと、苛立つことなど)は記憶されていることを意味します。
認知症と呼ばれる病気には種類があり、アルツハイマー型認知症を始めとし、レビー小体型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症など、原因によって症状や対応が変わってきます。
 認知症は、治すことができません。しかし病状の悪化を抑えることは可能です。そして、BPSD(認知症の行動・心理症状)を減らし、快適な生活を送っていただくことが大切です。
 認知症の方の介護をする上で、山本孝之理事長が提言した、認知症介護の三原則はとても大切になってきます。

 認知症介護の三原則
 1 いつも暖かい愛情と笑顔で
 2 決して叱らず、制止せず
 3 いまできることをしていただく
 
 認知症ケアで迷った際には、この三原則を思い出すことで、解決策は見つかります。
 認知症の症状や種類、対応を踏まえたうえで、認知症の方にとって大切なことを学ぶことができた、とても素晴らしい講義となりました。 (新井)